ペットボトルの水を半分まで入れて、私は女子トイレから飛び出したのだった。
女子トイレから出るとあれほど沢山いた生徒たちの姿が少なくなっていた。


「どうかしたの?」


待ってくれていた圭太へそう聞くと「さっき、グラウンドに自衛隊のヘリが来たんだ」と、廊下側の窓から外の様子を見つめた。


「ヘリ?」


窓に近づいて外を確認してみるけれど、ここからではグラウンドの様子が見えない。


「食料を届けに来たみたいだ」


食料と聞いて人肉を貪る生徒たちの姿を思い出したけれど、すぐにその光景を打ち消した。
自衛隊が持ってきた食料は感染者用の食料ではない。
非感染者の、普通の食料に決まっている。
わかっていたはずなのに、ガックリと肩を落としてしまいそうになる。


「それなら取りに行かないと」

「俺はまだ大丈夫だから」

「でも、なくなっちゃうかもしれないよ?」


生徒たちが一斉に食料に群がっていたとすれば、圭太の分なんてすぐになくなるはずだ。


「それは大丈夫だと思うけど……」