足がこちらを向いていて顔はわからない。
スカートが乱れて白い太ももが見えている。


「大丈夫?」


恐る恐る声をかけてみても返事はなく、また呼吸音も聞こえてこない。
回り込んで確認してみると、女子生徒の頭部から血が流れ出ている事に気がついた。

その血は排水溝へ向けてチョロチョロと流れていく。
しゃがみこんで顔を確認してみるけれど、私の知らない子だった。
麻子じゃなかったことに胸をなでおろすが、すぐに女子生徒の首に赤い斑点が出ているのを発見してしまった。
この子、感染してたらここで殺されたんだ!

頭をなにか硬いもので殴られたんだろう。
感染者同士が食べ合う光景はまだ見ていないし、倒れている子が食べられた様子もない。
残る可能性は大谷くんのように感染者を殺害した生徒がいるということだ。

私は数歩後ずさりをして、すぐに洗面台にとびついた。
殺人犯はまだ近くにいるかも知れない。
感染者が1人になったときを見計らって襲っているのかも知れない。

そう思うともう一刻もこの場にいることはできなかった。