教室の隅の席を借りて座っていた私達に、もともとこの教室にいた1人の男子生徒が近づいてきた。


「君も感染してるの?」


そう聞かれて思わず身構える。
大谷くんのように感染者を攻撃するつもりじゃないだろうかと、不安がよぎった。
その不安は顔にも出ていたようで、男子生徒は笑顔を浮かべた。


「大丈夫だよ。今ここには感染者しか残っていないから」


そう言って教室にいる数人の生徒へ視線を向けた。


「僕たちが感染しているとわかって、みんな逃げ出したんだ」

「そうなんだ……」


自分たちに危害を加えることはなさそうなので、ひとまずホッと胸をなでおろす。


「そっちの彼も感染者だよね?」


当然という様子で尋ねられて圭太が一瞬返事に詰まる。
けれどすぐに「あぁ、そうだよ」と、頷いた。
ここでは感染者として振る舞ったほうがよさそうだ。

私と圭太は目配せをして頷きあった。
私達のクラスでは感染者を排除する動きになったけれど、このクラスでは感染者から逃げる手段を取ったみたいだ。
どれだけ逃げたって、学校内から出ることはできないけれど。