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保健室の先生はちょうど鍵を開けて中へ入るところだった。


「先生!」


声をかけて呼び止めると、ユカリの姿を見て驚いたように目を丸くする。


「どうしたの? 大丈夫?」


40代前半の女性の先生はすぐにユカリをベッドへ寝かせてくれた。
ユカリは先生の言葉に返事することなくベッドの上で脂汗を浮かべている。


「さっき、教室で急に体調が悪くなったんです」


早口で説明して、ユカリの腕を見せる。
赤い斑点に先生は眉を寄せた。


「なにか、食べたり飲んだりした?」

「してません」


やっぱり先生もアレルギーを疑っているみたいだけれど、あのときユカリはなにも飲食していなかった。
ただ、窓は開けられていたから、そこから花粉や埃が入ってきていたかもしれない。


「わかった。後は任せて、あなたは教室へ戻って」


先生に言われて壁にかかっている時計に視線を向けると、ホームルーム開始の五分前になっていたのだった。