☆☆☆

目に見えないウイルスの感染力は信じられないくらい強いようで、教室に戻るまでに何度も悲鳴を聞いた。
きっと、誰かが感染した生徒や先生に襲われているんだろう。
だけどそれを確認しにいくような勇気は持っていなかった。
割って入れば次のターゲットは自分になるかもしれないんだ。

そう思うと背筋が寒くなり、後ろから誰かに追われているような感覚になる。
どうにか教室へ戻ってきたとき、教卓に先生の姿があった。
先生は私達が教室へ入ってきたことにも気がついて居ない様子で「落ち着いて! 座りなさい!」と、叫んでいる。

見ると教室のあちこちで生徒が泣き崩れていたり、怒号を上げていたりして、誰ひとりとして先生の言葉を聞いていない。
教室後方に座り込んでいる2人の女子生徒たちは、青ざめた顔で互いに寄り添い合っている。


「ウイルスってなんだよそれ! なんで感染者と同じ教室にいなきゃなんねーんだよ!」


純一が普段は使わない乱暴な言葉をはいている。
その言葉を聞いた2人の女子生徒が体をビクリと震わせた。

もしかして……。
座り込んでいる2人へ小走りに近づいて、身をかがめる。