「教室へ戻ろうよ。みんながどうなったのか、気になるし」


外に出られないのなら、それくらいしかやることはない。
圭太はうなだれたままだけれど、私の提案を受け入れてくれたようでノロノロと立ち上がる。

と、そのときだった。
人の気配がして顔を上げると、さっきまで昇降口に立っていて自衛隊員の1人が近づいてきていた。
その手には銃が握りしめられていて、咄嗟に身構える。


「すまん!」


次の瞬間その人は私と圭太へ向けて頭を下げたのだ。
白髪交じりの年配自衛隊員は姿勢のいい礼をして顔をあげた。
その目は微かに光っていて、涙が浮かんできているのだとわかった。


「病院はもう逼迫状態で、受け入れることはできないんだ。建物内では爆発的な感染が起きていて、外のほうがまだ少しはマシな状態らしい。外にいる人を最優先せよという命令が出ているんだ」


男性の声はとても小さくて、よく聞いていないと聞き取れないほどだった。
上からの命令なんて内密にしておかないといけない情報だからだろう。
私は呆然としてその人を見つめた。


「外にいた人たちは、まだ感染が少ないんですか?」