病院だって、院内感染が起こっていると記事に書いてあった。
そもそも治療方法だって、、まだ模索中だろう。


「感染者全員が無理なら薫だけでいい! 薫だけでも助けてやってくれ!」


圭太は叫びながら膝をつき、頭を下げる。


こちらをチラリとも見ようとしない自衛隊員たちへ向けて土下座する圭太に胸の奥がジリジリと焼けるように痛くなる。
「私のためにそんなことまでしなくていいよ。やめてよ圭太」


止めようとする声が震えてしまう。
ジワリと涙が浮かんできて視界が歪み、圭太の姿も歪んで見えた。


「お願いします! 薫を助けてください! お願いします!」


地面に額を擦り付けて何度も何度も同じことを口にする。
私は圭太の隣に座り込んで両手で顔を覆って泣くことしかできなかった。
圭太がこんなにも私のことを心配してくれていることが嬉しくて、圭太の気持ちが通じることはないのだとわかっていて、苦しい。


「もういいよ圭太。私は大丈夫だから、頭を上げてよ」


土下座を続ける圭太を少し強引にやめさせて、その体に抱きついた。
圭太の心音がはっきりと聞こえてきて、なんだかまた涙がこぼれだしてくる。


「私も圭太もまだちゃんと生きてるし、だから、それだけでいいから」


伝えたいことがうまく文章としてまとまらないけれど、圭太は理解してくれたように全身の力を抜いた。