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短時間に2人の生徒が殺される光景を見てしまった私達は、ふらふらと空き教室へ戻ってきていた。
年のために他の出入り口も確認するつもりでいたけれど、あまりにも衝撃が大きすぎたからだ。

教室の壁を背もたれにして座り込み、どうにか体の震えを抑えようとする。
けれどなかなかうまく行かない。
さっきから体はブルブルと震えっぱなしだ。


「大丈夫。大丈夫だから」


何度もそういう圭太も、もうなにも考えられていない様子だ。
とにかく大丈夫だと口に出すことで、心の安定を図っているのかもしれない。

私は震える手でスマホを取り出した。
昨日の晩しっかりと充電してきたから、夕方くらいまでは使えるはずだ。
検索画面を表示して、この街のウイルスについて調べてみると、10万件ものサイトがヒットした。


「あっという間に10万件だよ。それくらい報道もされてるんだろうね」


そう言っても圭太からの返事はなかった。
新しい記事もきっとどこかにあるはずだと期待してニュースページを確認する。


『院内感染。高齢者施設での感染。次々と起こるクラスターに病院はすでに逼迫状態』

「病院でも感染者が出てるんだ……」

「薫も、病院へ行かないと」

「そんなの無理だよ。学校から出られないんだから」

打たれた彼女はきっと感染していなかった。