「少し落ち着いてきたか?」


圭太が私の額に自分の手を当てて聞いてきた。
そう言えば体の熱は冷めてきたかもしれない。
結局体温を測らないままだからよくわからないけれど。


「うん。そろそろ教室に戻ろうよ。みんなのことが気になるから」


ベッドから立ち上がっても、もうふらつくことはなかった。
それを見て圭太も安心したようだ。
ふたりして保健室を出たとき、廊下の奥から誰かが走ってくる足音が聞こえてきて振り向いた。
そこには男子生徒の姿があり、顔を真赤にして走ってくる。


「助けてくれ!」


男子生徒は私たちの姿を見つけて必死に手を伸ばしている。


「どうしたんだ?」


圭太が質問するよりも早く、その男子生徒は後ろから追いかけてきた別の男子生徒に押し倒されていた。


「やめろ! 離せよ!」


押し倒された男子生徒は必死にもがいて逃げ出そうとする。
しかし、馬乗りになっている方の男子生徒は聞く耳を持たない。


「あの人、柔道部の人じゃなかったっけ?」