できればそれを踏みつけてやりたい気分だったけれど、涙が浮かんできてなにもできなかった。


「水しか飲めないなんて、これから私どうなっちゃうの」


とめどなく流れる涙を止めることができずに両手で顔を覆う。
あの記事が真実かどうかはわからない。
けれど、元にユカリは私の目の前で倒れてしまった。
きっと、ある程度信憑性のある記事だったんだろう。


「大丈夫。大丈夫だから」


ふと気がつけば私は圭太の両腕に包み込まれていた。
ハッと息を呑んで顔を上げる。


「ダメだよ圭太。感染しちゃう!」


慌てて圭太の体を引き離そうとするけれど、圭太は更に腕に力を込めて私を抱きしめていた。


「感染なんてしない。きっと大丈夫からだ」


耳元で子供をあやすように何度も同じ言葉を繰り返す。
その言葉を聞いているうちに徐々に私の気持ちも落ち着いてきていた。
涙は止まり、どうにか視界が鮮明になる。


「ありがとう圭太」


声はまだ震えていたけれど、さっきみたいにパニックになって叫ぶようなことはもうない。
圭太も安心したようにそっと体を離した。