「え?」

「走って、逃げるんだ!」


圭太が叫ぶ。
次の瞬間、圭太の後ろに人影が見えた。
それは圭太の父親であると気がつく前に、直に腕を掴まれて無理やり走らされていた。


「離してよ! 圭太がまだ建物の中にいるんだから!」


どれだけ叫んでも直は足を止めなかった。
走って走って建物が完全に視界から消えた時、ドォォンッ! と大きな爆発音が耳をつんざいた。
咄嗟に木々に身を寄せてしゃがみ込む。

しばらく噴煙が舞い上がり、周囲の視界を遮った。
土煙にまざって薬品の匂いが鼻孔を刺激する。


「今のって……」


圭太が持っていた赤いタンクを思い出す。
まさかあれはガソリン!?
研究施設には様々な薬品があるから、火をつけた後大爆発を起こした可能性がある。


「圭太!」