☆☆☆

車はスルスルと住宅街の中を進んでいく。
ここは人の生活区域だからか、さっきまでよりも更に死体の数が増えてきていた。
その死体は逃げ出そうとした人たちの車によって何度もひかれ、ペチャンコに潰れているものが大半だった。
圭太は外の景色を見ないように、必死に顔をそむけている。


「そこの、白い塀の家で止めて」


自分の家が見えてきて私は声をかけた。
車が我が家の前で停車する。
白い壁に囲われた2階建ての家に戻ってくるのが何年ぶりかのように感じられる。

逸る気持ちを抑え込み、後部座席から降りて家へと走る。
外の空気はひどくよどんでいて、血肉の匂いが充満している。


「お母さんいる!?」


家へ向けて声をかけながら玄関前のアプローチを欠ける。
そして玄関ドアを大きく開いた。
その瞬間、血の匂いがいっきにきつくなった。

私の食べることのできない感染者の匂いだとすぐに気がつく。
足元へ視線を向けると玄関に、いつも綺麗に並べられていいた靴は四方に散乱し、その奥に母親の姿を見た。