父親は会社に監禁状態になっているかもしれないが、専業主婦である母親はまだ家にいるかもしれない。
もしかしたら、家から出られなくなっている可能性もある。
そうであれば、一緒に連れて行くつもりだ。

でも、もし家にいなければそのときは……どこにいるのか、探し出さないといけない。
そして、両親も一緒に薬を飲むのだ。
感染していなければワクチンを打てばいい。

それが、私の望みだった。
知らない間に膝の上で拳を握りしめていたようで、隣に座っている圭太が私の手を握りしめる。
それで緊張が少しほぐれた。


「ありがとう」


小さな声でそういったのだった。