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圭太の父親が運転する車で街を走ると、あちこちに死体が転がるばかりで生きている人の気配を感じられなかった。
次々と後方へ流れていく景色の中、スマホを取り出して確認する。
両親からの連絡が入っていないか確認したけれど、今日はまだなんの連絡も来ていなかった。
この前父親から大丈夫だと連絡を受けているけれど、これだけの惨状をみるとやっぱり不安になってくる。


「ねぇ、一旦私の家に寄ってくれないかな?」


運転手ではなく、助手席に座っている直へそう言った。
直は運転する圭太の父親に包丁を突きつけたままだ。


「家はどこへんだ?」

「ここを真っ直ぐ行った住宅街だから、すぐだよ」


周辺は私も馴染みのある商店が立ち並んでいる。
もう少し先へ行けば住宅街があり、その一角が私の家だ。


「家に家族がいるのか?」


圭太の父親に聞かれて私は言葉をつまらせた。


「わからないけど、お母さんがいるかもしれないから」