「さっき言っただろう。これは地球規模の研究だ。このウイルスは核兵器としての販売もできるし、当然薬を欲しがる人間も現れる」

「核兵器だって? このウイルスを世界にばらまくつもりか!?」

「そういうこともできると言っているんだ。国だってバカじゃない。自国の研究所がウイルスを撒き散らしたなんて報道が続くよりも、一刻も早く事態を沈静化させて裏でウイルスを利用する方がいいと気がつくに決まってる」


直は父親の説明に絶句してしまっている。


「テレビをつけてみろ」


父親に言われて圭太がテーブル上のリモコンを手にする。
流れ出した番組は通常のお笑い番組だった。
他のチャンネルに切り替えてみてもこの街のニュースをしている番組はなかった。


「なんで……あんなに報道されてたのに!」


すぐにスマホニュースを確認してみるけれど、結果は同じだった。
この街のニュースは取り扱われていない。


「もう動き出した証拠だ。ネットで検索しても、もうヒットすることもないはずだ」


父親の表情が勝ち誇ったように歪む。
言われたようにウイルスに関して検索をかけてみたけれど、検索結果は0件と表示されている。


「嘘でしょ……」