放課後、体育館に行けば

たくさんのギャラリーがいた

目的はもちろんみんな同じ

バスケ部の秋月先輩であろう

あちこちから



「翔くーん!」

「翔せんぱーい!」

「秋月先輩!」



…手で口を覆う

うっわ、私あんな人としゃべっちゃのか

あの時の緊張が今になってきた



「優?どうした?」



友達が心配そうに聞いてくる

こんなに優しかったのね



『ううん、だいじょ

「だよね!ほら秋月先輩応援するよ!」

やっぱり優しくなかった』



ちなみに友達に先ほどの事は伝えていない

何故って?

言わなくてもわかるだろう

今度こそ本気で殴られそうだ



さっきのことがあったので

少し欲が出てしまう



…もう一回話したいな



いやいや、ダメだよ

自分があんなイケメンと仲良く話すなんて

烏滸がましいことしちゃ

あれは

人生の運を使っちゃったんだなと思おう



いつも通り穴が開くほど

秋月先輩をガン見しようと

俯いていた顔をあげる



「優!こっち見てる!」

『そんなわけないでしょ!?
モブBが自惚れるな!!?』

「モブAは?」

『私』

「調子のんなよ!?」



ガバッと本日二度目の胸倉を掴まれる



『だ、だって!他の人たちも私のこと見た!
って言ってるんだから…』



ファンサされたオタクと同じ原理だよ。



悲しげに言えば

勘違いでも己が幸せならいいだろ!?

と、火に油を注いでしまったらしい


2人であーだこーだ騒いでいれば

より一層周辺が叫び声が酷くなった



「優ちゃんじゃーん!拝みに来たの?」



目の前には秋月先輩

固まる友達と胸倉を掴まれたままの私



「あ、秋月、せんぱい…」

『ウィッス…』

「お友達?」

「は、はい!澪です!」



挙手して元気な返事をする友達

さっきまでのゴリラ感どうしたんだよ



「ちょっと!
いつのまに仲良くなってたの!?」

『いや、別に仲良くは…』



仲良いと思われるのは些かまずい

学校生活を平穏に過ごせなくなっちゃう

だから私はイケメンは大好きだけど

拝むだけ眺めるだけで良かったんだよ



でも心のどこかで喋りたいとか

邪な心のせいで

屋上行ったのが間違いだった…

自己嫌悪に浸っていれば



「え?仲良くはないでしょー。
さっき名前知ったばっかだし」

『あっははそうですよね!
部活頑張ってください!』



澪の手を引きながら体育館を出る


ちょっと思ってたけど

秋月先輩って正直だなーと思う

普通の認識だと

うん!仲良し!とか言われて

恋愛に発展…って少女漫画の読みすぎか


まぁ私はそんな気更々ないんだけど



「で…?」

『?で、とは?』

「鈍感なフリするなよ…?
いつの間に名前認識されてんだって
聞いてんだよ!?」

『あーーー、屋上で出くわしてしまいまして』

「はーまじか…
優の意味わからん発想は合ってたのね」

『私もマジでビビった』

「あんた秋月先輩のせいで
人生の運なくなってってるんじゃない?」

『それは私も思う』