24日
相手の女の子には悪いが正直気分は最悪だ
本当ならば優ちゃんと会っていたのに
待ち合わせ場所に行けば既に来ていた
「翔くん!今日はごめんね、ありがとう」
「…いや、んで話って?」
「あ、お茶しながら話さない?」
「わかった」
綺麗な巻いた髪、女特有の香水の香り
なんだか好きでもない女と出かけるのも
随分久しぶりな気がする
ちょっと前まではしょっちゅうだったのに
カフェに入りポツポツと話し始める
「たぶん、私の言いたいことは
バレちゃってると思うんだけど…
入学した時から、好き」
「…俺のどこが好きなの?」
「優しいとことか、クールなとことか
琉生くんと話してる時だけ無邪気なとことか…」
「そっか…あと顔?」
「もちろんそれもあるけど!」
アイツもいつも顔が国宝だのなんだの
騒いでたなーと思い出して頬が緩む
「ハハッ ありがとう
でもごめんね、俺好きなやついんだ」
「!!」
「気持ちは嬉しいけど、答えられない」
「…翔くん、なんか雰囲気変わったよね」
「そう?」
「もしかしたら私が何も知らなかった
だけかもしれないけど…小鳥遊さんのおかげ?」
まさかその名前を聞くと思わず
飲み物を吹き出しそうになり咽る
「ゲホッ…な、なんで」
「あー図星だったかー」
あーあーやっぱりかーとため息を付きながら
テーブルに肘を乗っける
「…今だから言える事って言うか
聞いたら翔くん怒るかもしれないけど」
「???」
「私、小鳥遊さんに酷いこといっぱいしたの」
「は」
「私も何か焦っちゃって…でも小鳥遊さんに
欲しいなら取ればいいって啖呵きられちゃった」
「なにしたの?」
「…いきなり水ぶっかけたり、1回だけ叩いちゃった」
「アァ?」
我ながら低い声が出た
「…あー…だからアイツたまにジャージだったのか」
思い当たる節はたくさんあったのに
気付かなかった俺も悪いな
「でもこの前、琉生くん派の人たちが勘違いしてて
それ止めに入ったんだけどさ」
「あー」
そういえば琉生派と俺派があるらしいのは
噂程度に耳に入っていた
「今までの事を謝ったら
私の気持ちもわからなくないって言って
寧ろカッコイイ、助けてくれてありがとうって
お礼言われちゃったの」
「確かに、アイツあんまり気にしてなさそうだな」
「そうなの、本当にいい子で
いじめてたのが恥ずかしくなっちゃった」
「アイツって先輩にも容赦なく言うよな」
「フフッ そうそう!だから優ちゃんのこと
私大好きになっちゃったの…
だから今日は気持ち伝えたかっただけ」
言ったからスッキリしたー!と伸びをする
本当にそれだけらしい
「俺も気付いてて適当にしてて悪かった」
「急に素直に言うわね」
「俺もケジメ的な?かっこよくね?」
「最後の一言がなければかっこよかったわ」
「…よし、今日はパーッと遊ぶか」
「…いいの?」
「適当にしてきた、お詫び…的な?」
「…じゃあ、今日だけでいいから
わがまま聞いてくれない?」
「できることなら」
「今日だけ恋人にしてくれない?」
本当にこれで後腐れなく
ただのクラスメイトに戻ると言う
「あー…」
「思い出ってことで、お願い?」
「あーもう仕方ねぇな!俺って優し過ぎねぇ?」
「優しいところにつけ込んでこめんなさいね」
「絶対!ぜーったい!今日だけだかんな!」
「わかってるわよ!」
そう言いながら嬉しそうに腕を組んでくる
「イケメンと腕組めるなんて最高ね」
「…なんか優ちゃんみたいな事言うのな」
「え?そうなの?」
「顔面国宝先輩って叫ばれたことある」
「あははっ なにそれー?
でもそう叫んじゃう気持ちわかるなー」
「わかんのかよ!つか、最初からそういう風に
素直に俺に話しかけてればよかったのに」
「話しかけてるつもりでしたけどー?
基本的に翔くんってあんまり
女の話聞いてないじゃない」
「あ、やっぱそういうのバレてんだ?
結構頑張って愛想振りまいてたんだけど」
思ってたよりも話しやすいやつだった
こういうやつなのに
俺は適当にあしらってたんだなと
少し、申し訳なく思う
その場は楽しく遊んだ
だけど、まさかその場面を見られていたなんて
この時の俺は全く気付いてなかったんだ