イケメンくん


名前は”秋月 翔” 3年生の先輩

部活はバスケ部 髪の色は金髪

たまーに黒髪になるそう


その情報を手に入れたときに

家で布団に顔をツッコんで

ご近所迷惑にならないように叫んだ



『絶対カッコイイに決まってんじゃん!!』



入学して数日たったある日

あれからやはり学年が違えば

なかなかお目にかかることができない

新しくできた友人に聞けば

いつも女の先輩に囲まれているから

拝めただけすごい。と真顔で言われた



まぁ極稀に見かけるので

あまり気にしていなかったのだが



私、いま、息できない状況

目線の先にあの”秋月翔”先輩がいるから



好きとかそういうものじゃない

憧れ、見れればいいと思っていたイケメンが

向こうから眠たそうに

欠伸をしながら歩いてきているので

心臓はバクバク通り越して

ドッドッと脈打っている

なんなら極度の緊張で冷汗がでてきてる



いつもならいる取り囲む先輩達もおらず

秋月先輩ただ一人

そしてここは本校舎とは違う

ほぼ使われていない別校舎

話しかけるにはまたとないチャンス

でもチキチキのチキンの私にはまっじで無理

なので、目線が合わないことを願いながら

ガン見しながら歩き始める



よし、目合わなかった…

久々に顔面国宝が拝めたので

ニヤニヤするのを必死で両手で隠していれば

思いっきり腕を後ろから引かれた



『!?』



何が起こったのかわからず

腕を引っ張った人物を見ようとすれば

目がチカチカした



秋月先輩と目が合ってしまった



『…ぇ』



発せられたかわからない声が出た



「お前、見すぎ」



あ、思ったより声低めなんだな…とか

反射板かよ?まぶしっ!とか

状況がのみこめず余計なことを考える



『すみません、見るだけならいいかと…

気を付けます。失礼します』



捲し立てるように言葉を並べる

先輩の眉間だけを見つめ

目を見ないようにした

だってあれ以上見つめたら

きっと私召されるもん



「あ、おい!」



後ろで先輩が何か言おうとしていたが

聞こえないフリを決め込んだ

だんだんと足早になり

最終的にはダッシュでトイレに駆け込む

誰もいないのを確認してから

盛大にため息を吐く



『あれは…なんだ。人間?人間だよね』



冷静に考えてみてもなんで突然

関わったこともない私に

話しかけたのかわからない



『…道聞こうとした、とか?』



いやいや、んなわけないよねー

私のがなんなら道聞きたかったよ



深呼吸をしてからなんとか教室に戻り

さっきのことを友人に伝えれば



「馬鹿なの?
いや馬鹿なのはもうこの数日で気づいてたけど」


『ディスがすごいじゃん、なんで』


「そもそも暇だからって休み時間に
別校舎行くのが意味わからん」


『お散歩という名の探検したかったんだよ。
新鮮じゃん』


「しかも話しかけられたのに無視して帰ってくるとか…
ハァ…マジで勿体ない」


『それは私も思ったけど…』



知ってた?あんまりイケメンだと

キャパオーバーになるって



『もうないだろうし、
私は眺めるだけでいーの』



身の程を弁えないと

大変なことになるんだから