「できたぞー」
『わっ!パスタ!?』
「俺お手製のトマトクリームパスタでーす」
『…』
こんなのもうないかもしれないと思うと
思わず無言で連写してしまった
「気済んだ?」
『あっ、大満足です』
先輩を見れば前髪をヘアゴムで結んでいて
ちょんまげになっていた
『かっっっっっわい』
「でしょ?」
『はい』
「撮る?」
『いくらですか』
「だから積もうとすんな」
『つい…』
「…別にお前なら好きに撮っていいけど」
『っ…売ったらお金になりそうですね!』
「売ったら殴る」
売りませんよー!とふざけて言ったが
ドキドキして心臓がうるさい
さっきの言葉に深い意味はないんだろうけど
先輩の言葉に一喜一憂してしまう
「冷めないうちに食おうぜ」
『いただきます!』
お昼と言っても時間が結構遅かったので
すでにもう夕方
あんまり長居するのも悪いかなと帰る準備をする
『洗い物もお任せしちゃってすみません、
ごちそうさまでした!そろそろ帰りますね』
立ち上がって挨拶すれば
先輩も一緒に立つ
「あー…」
『?』
「あのさ」
『はい?』
「あーーえっと…」
『先輩?』
言いづらそうに口ごもる
「あ゛ーーーー!!!」
突然叫んだかと思うと
その場にしゃがみ込み頭をガシガシとかく
「俺のこと、名前で呼んでくんね?」
『…へ?』
「前から思ってたんだよ。なんか、よくわかんねぇけど
おまえに秋月先輩って呼ばれんのむず痒い」
今更!?そこ!?なんで!?
『???まぁ、はい、それなら…わかりました、翔先輩』
「!!」
『え、ちょ、は!?』
秋月先輩はやだって言うから
翔先輩って呼べば真っ赤になる先輩
「て、照れてねぇから!!」
『あ、照れたんですね、翔せんぱーい』
なんだか可愛く見えてきて意地悪したくなる
隣にしゃがみ顔を覗き込む
『翔せんぱーい、真っ赤になちゃって可愛いですねー
そんなに私に呼んでもらいたかったんですかー?』
「…そうだけど?
俺が優にそう呼んでもらいたかったの、悪い?」
ボンッ
今度は私の顔が真っ赤になった
ずるい、それはずるいよ
そんな困った顔で言われたら無理だよ
「照れてんの?かーわいっ」
『し、失礼します!お邪魔しました!』
「あ、おい!」
先輩の制止の声を無視し
階段を駆け下りダッシュで逃げる
家が見んくなるところまで走り
息を整える
『思わせぶり!やめてよね!?
…もう…好きだ…』
俯いて出た声は自分でも笑えるくらい
情けないくらい小さな声だった