『あっ、手土産もなんもない!』

「気にすんなって、いま誰もいねーし」

『お、お邪魔します…!』

「のぼって奥の部屋だから」

『え、は、はい!』



遠慮がちに部屋にお邪魔させて頂く



『うわー…シンプル…』

「あんま見んな」



お茶で良かった?と

テーブルの上のノートや参考書をどかして

グラスが置かれる



『ありがとうございます。ってかすみません、
勉強の途中だったのに』

「いいって言ってんの!
俺は頭もいいって教えたでしょ?
今日しなくたってどうにでもなるわ」

『そうでしたね、じゃあ早くご飯にしましょ』

「…おまえ日に日に図太くなってくよな」



会った時なんて真顔で凝視するか

ギャーギャー騒いでたのに。と

確かに…そうかもしれない

いや心の中では常に叫んでるけども



『いまでも先輩は天使です』

「久々に叫んでみてよ」

『そんな、急にできるもんじゃなんですよ』



つまんねーと口を尖らせている

うん、そういうとこだぞ、可愛いポイント



「じゃあ作ってくるから適当に寛いでて」

『あ、手伝いますよ』

「…料理できんの?」

『多少はできます!』

「まぁ今日はいいって!
俺の腕前見せつけてやっから」



うめぇーの作ってやる!とウィンクして去って行った



『え?????????』



かっこよすぎて吃驚したんだけど

イケメンがやるとなんでも様になるからすごい


深呼吸して落ち着く

部屋をぐるっと見て頬を抓って



『現実だ…』



なんでこんなことになっているんだろうか

彼女でもなんでもない

ただの後輩な私がなんで先輩の家に

上がりこめているのだろう


なんだか落ち着かずキョロキョロすれば

さっきテーブルの上にあった参考書が目に入る

捲って見てみれば全くわからない


先輩、本当に頭いいんだな…

こんなの馬鹿な私が見ても

頭が痛くなってくるだけだ


そっか、あと少ししたら先輩に会えなくなるんだ

夏休み会えなくても

学校行けば会える!とか考えてたけど

卒業したらそれもできなくなる



『なんだかなー…』



恋患ってんなー

こんなんさっきの考えとは逆に

どうにかなりたいとか思っちゃうじゃん