「お、早かったね。要件はなんだったの?」

『ひ、ひまっ、ひまつぶっし、らしいっ…』



ダンッガタガタッ…

走ってきた勢いのまま開けようとしたら

壊れたんじゃないかというほど

うるさい音が鳴った



「…何故息切れ?」

『と、とりあえず、澪!もし先輩来たら
戻ってきてないって、言って!』



教室の扉を閉めてそのままベランダに出て

しゃかみこんで隠れる



「やだ。
秋月先輩に嘘つけるわけないじゃない」

『お願い!!!』

「ハァ~、後でジュース」

『ラジャ!!!』



そろーっと中腰で扉を見ていれば

扉の小窓から

キラキラの金髪が目に入り身を隠す



「あれ~?あーっと、確か澪ちゃん!」

「こんにちは、秋月先輩!」

「優ちゃん戻ってきた?」

「先輩と消えてから
まだ戻ってきてないですよ?」



ナイス!ナイスだよ澪様!!!

後で2本ジュース買ってやる!!!



「…ふーん、そっか!」



窓は開いているので

物音は立てずに静かに耳をすませる



「ここ優ちゃんの席?」

「はい!」



声が聞こえなくなった

あれ?でもまだたぶんいるよね…?

そろーっとまたしても覗き見れば

私のノートをパタンと閉じ

先輩が立ち上がるのと反対にしゃがむ

…モグラ叩きのモグラの気分だよ



「じゃあ澪ちゃん、また部活見に来てね!」

「はい!もちろんです!」



扉の閉まる音が聞こえたので覗き込む

若くても中腰を何回もしていると

そろそろ腰を痛めそうだよ



『おい、なに蕩けた顔してんの』

「優。私あんたの友達でよかったわ…
私も認知されてた…」

『はいはい脆い友情じゃない事を願うよ~』