「…優ちゃんっていいよね」
『いい、とは?』
「俺との距離感わかってる!」
ええ、それはもう弁えておりますとも
『勘違いしそうな事は多々ありますが
うぬぼれないように日々自問自答してます』
「勘違い?俺と?」
『…はい』
「例えば?」
『思ったより目が合うなとか、よく絡まれるなーとか
私すっごいポジティブなんで勘違いするんですよ!
でも先輩のことは拝み対象枠にぶち込んだんで…
安心してください』
「なるほどね~!確かに最近、
優ちゃんに絡むの楽しいんだよねー」
『あ、りがとうございます…?』
「まぁ絡んだのが優ちゃんなのは
たまたまなんだけどさ」
あぁ、やはり私の運が使い果たされたか
「でも反応が面白いしね!
イケメンを拝んでる割には顔が無だし」
『あぁ』
ハハッと苦笑いが出る
『あれは叫びたい気持ちを
頑張って堪えてる顔ですよ』
「じゃあ今の気持ちを隠さずにどうぞ」
『先輩めっちゃ顔面が強いです!天使!
同じ酸素吸える事に感謝!!!』
咄嗟に出た言葉に我ながら限界オタク感すごい…
と恥ずかしくなった
そーっと先輩を見れば
目を見開きポカンとしている
『え、その顔は初めて見た可愛い』
「いや可愛いはやめろ」
『すみません、つい心の声が』
気をつけないとな…
一人心の中で反省をしていると
先輩が突然震え始める
『え、え!?な、どうしました!?震えっ
「あははははっ」
!?』
突然先輩が爆笑し始めた
なにごとです!?
「いや、おまえ面白すぎんだろっ…
フハッ…くくっ」
『…笑い過ぎです。それに
そう思ってんのは恐らくみんなですよ?』
「それを本人に言ってのけたのは
優ちゃんが初めてかな~!」
徐々に落ち着いてきた先輩
タイミングよくお昼が終わるチャイムが鳴る
名残惜しいけどそろそろ戻らないと…
自分でもいまほんの数分だけど
話せてたのがすごいとドキドキする
…どうせならお願いしてみようかな
『あの先輩』
「ん?」
『写真を一枚撮らせてもらえませんか?』
それがあれば女の先輩にビビらなくて済むし
写真があるのバレたら積むけど
あとはいつでも拝められて一石二鳥だ
「どうしよっかなー」
『ヴッ…いくら積めばいいですか…!?』
「いやお金を積もうとすんなよwww」
またしてもツボに入ったらしく
ゲラゲラと笑っている
「これからもこのいい距離を
保ってくれるならいいよ」
『もちろんです!!』
「破ったら写真消すかんなー」
そう言いながら私の手からスマホを取られる
…自撮り!?感謝!!
神様よ、ありがとうございます。
とお祈り申し上げてると
肩を引かれてカシャッとシャッター音が鳴る
『???』
「ホラ、じゃ優ちゃんまたね~」
スマホを軽く投げられ
手を振り屋上を出ていく先輩
状況が飲み込めず返されたスマホを見れば
ボケッとした私と
憧れの爆イケ秋月先輩のツーショットだった
勢いよくしゃがみ込み
片手で緩む口元を抑える
『ちっっっかいよ!!!!!!』
震える手で保存し高鳴る胸を抑えて
ヨロヨロと教室に戻った私に
澪が変な目で見てきたのは言うまでもない