警戒して退がる彼らに、開き直った先輩は堂々と宣言する。



「丁度いい。俺たちも、第三勢力としてその賭け、参加させてもらおう」



「第三勢力……」



鬼の集団と、五家がそれぞれで、七番目………深く考えるのはやめよう。

ツッコむべきはそこじゃない。



「君は、文化祭で俺と対等にやりあった御仁ではないか?」



文化祭でプロレスの対戦相手に先輩を指名した、筋骨隆々な男、浄土寺常磐が気づいた。



「火宮当主の火炎球を斬った人だよね」



金光院雷地も気づいたようだ。



「ツクヨミノミコトの生まれ変わりとその従者……。お、お前達、火宮家に来い! 手厚い待遇を約束する!」



当時と似たような黒い仮面をつけているから気付いたのだろう。

口約束でしかないのは火を見るより明らか。

しつこい火宮当主の誘いは当然却下だ。



「何っ」



「ツクヨミノミコトだと!?」



「何故こんなところに……」



「何しに来た!」



火宮当主のツクヨミノミコト発言で、当主達がざわめく。

子息達も、多少驚いてはいるようだ。

先輩は刀を顕現させ、挑発するように鼻で笑う。

天に向けた指先をくいくいと己に向けた。



「鬼の子は俺様がもらう。かかってこいよ」



瞬間、当主達からの一斉攻撃をくらった。

火が、水が、草が、土が、刃物が、私達に触れるところで爆発する。



「ハッハッハッ! いくら術を斬れるといえど、この数ならば捌ききれまい!」



「一番厄介そうなのを真っ先に潰すのは、定石ですな」



「いやはや、皆と意見が合ってよかった」



「これから敵になるんだがな」



「次は皆で火宮をやろうではないか」



「待て、ここは打たれ強い浄土寺を皆でやろう!」



次の標的について話す彼ら。


しかし、煙が晴れると、無傷で立つ私達が彼らの目に留まる。



「オレだって、やれるんだ!」



先輩を守るように立つヨモギ君が両手を前に出したそこには、透明な壁が形成されている。

壁の外は焦げて、刃物が刺さり、細く煙があがっていた。

当主達の攻撃はそれに阻まれ、届かなかったのだ。

いつの間に、こんな技を覚えていたんだろう。



「よくやった」



先輩に褒められて、ヨモギ君は子どもらしく照れていた。