介入するなと言ったり、助けてを求めたり。
自分の都合で手を貸せと言ったり、手を出すなと言ったり。
私の言葉はめちゃくちゃだ。
そんな私が何を言えるというんだ。
気まずさを誤魔化すように、倒れている小人を拾い上げる。
気を失っても芋けんぴは手放さないのだから、たいした執念だ。
「おい、大丈夫か!?」
頂上の方から、火宮桜陰が向かってくる。
いつまで経っても現れない私を心配して来てくれたのかもしれない。
彼は私の手の上にある小人を確認すると、顔を顰めた。
「お前また、変なもの拾いやがって」
「これは違います」
「さっきスサノオの気配がしたが、何があったんだ?」
暗い顔の私を気遣ってか、先輩が優しく声をかけてくれた。
「それは……」
答えようとしたら、小人がモゾモゾと動き。
「はっ! 鬼っ! 鬼はどこに行った!? ぼくは死んだのか!?」
目を覚ました瞬間飛び起き、狂乱したように飛び回る。
素早いそれを片手で捕獲した先輩は、小人の顔をまじまじと眺める。
「なんだこいつは」
「無礼だぞ、人間風情が! ぼくを神と知っての狼藉か!」
「神っつっても、てめえみたいな雑魚が何の役に立つ」
「ひいいっ! 鬼だぁっ!」
「まあまあ先輩……」
握力で潰しにかかる鬼の所業を発揮する先輩を宥める。
「ったく、鬼ならその辺にいるだろう」
先輩の視線の先、頭に角を生やした巨漢が数人、木の陰に隠れていた。
「ヒイイィィィィ」
先輩の手から抜け出した小人は、私の服に縋りついた。
「ったく、お前の山だろう。そんな怯えることか?」
「鬼がいるなんて知らなかったよ!」
鬼は遠巻きにこちらを見てくるだけで、襲いかかってくる様子はない。
えぐえぐ泣きべそかく小人が大袈裟なだけに見えてしまう。
「お前! さっきみたいに鬼を退治してよぉ!」
「断る」
答えたのは先輩だった。
「お前に言ってない!」
先輩は、わがままな子供のように叫ぶ小人をつまみ上げ、目線の高さに持っていく。
「この山は鬼の住処のようだが、襲ってこないなら斬らない。無闇に殺したいわけじゃないからだ。きっと鬼も同じことを考えている。だから襲ってこない。……言いたいこと、わかるか?」
小人はぷるぷると首を横に振った。