「みーやーじーま」
数学の授業は僕が人気者になって五分後に終わった。
注目されるのは好きじゃない。
赤面症の僕には生き地獄、そのものだった。
開いただけで見てもいない教科書に、日付と一発描きの曇りのち雨の絵が描かれているノートを閉じた。
次は給食。
教科書、ノートと引き換えにスクールバッグからお弁当箱を取り出した僕。
そんな僕の背後、黒染めが落ち始めた焦げ茶色の髪一人、カラーTシャツを下に着た金髪が一人。
僕の肩に手をまわした。
意識はハッキリとしている。
視界だって良好。
腹の痣だって。
うなじの傷だって。
もう慣れたはずなのに。
どうして僕は
「うぅっ…」
こんなにも弱いのだろう。
コンクリートの床は僕を慰める訳では無く、同情する訳でも無く、静かに僕を冷たくさせた。