ドンッと音が響いたコンマ数秒後に,朱鳥さんと血夜くんが叫んだ。



「なに,音ほど大したこと起きてないけど」



はぁとため息を吐いて,私は腕の中の何歳児だか分からない子供をたたせる。

私のシャツにジュースを軽くこぼした男の子は,ぱちくりとして。

おっ,意外と大丈夫そう。

そう思った次の瞬間には泣き出していた。

あらら,と低い目線のまま見つめる。

すると視線に気づいたその子は,その理由が気になるのか少しずつおさまった。



「お母さんは?」

「こんびに,おかしくれなくて,つまんなくて,でてきた」



お母さんじゃなくて,自分についての言葉だったけど。

取り敢えず場所が隣だと分かって安心する。



「カエル,好きなの?」



緑のTシャツを指すと,こくんと頷く園児。

私はくるくると指を絡めて,男の子向きにカエルを作って見せた。

陳腐な手遊びだけど,その子は見たことがなかったようで。

つんつんと私の指を不思議そうに見る。



「……ちゅっ。ほら,泣かないの。残りのジュース,カエルさんが飲んじゃうよ」

「カエル,だめ」



話しながら自然と手を繋いだ。

そのまま話しながら店を出るように誘導する。

すると,今にも走り抜けそうな女性の姿が大きなガラス窓のそとに見えて。