「でも……それだけじゃ,ないよ」



何ですか,と。

血夜くんは何でもどうぞと言わんばかりに胸を張る。

するりと言葉は引き出された。



「束縛は,しないかもしれないけど」

「え,何でですか。別にいいですよ朱鳥さんなら。多分僕もします」



う……と揺れる心。

惑わされるなと,私は心臓を押さえた。



「簡単に嫉妬して,簡単に拗ねて,勝手に連れ戻しにいく。呼ばれてなくても逢いに行くし,泣いて怒って困らせる。甘えるって,多分,そう言うこと,だよ……? 絶対,別れてなんてあげられない」



小さい頃から,産まれたときからそうだった。

ねだったりが,いつも間に合わなくても。

1度手にしたものを手放すのは,どんなゴミでも渋ってしまっていた。

今ベッドにある人形だって,汚れてるからと何度言われても,抱き締めて離さなかったもの。

何度も洗濯して,乾かして,ようやく許可して貰ったもの。

大事にしたら,手放せないの。