「ん~ん。今夜はお寿司にしちゃったわ~ぁ」
「ちょっとお母さん,私今日帰ってきたんじゃないんだけど? ご馳走,これで3日目だよ」
見えないハートの語尾に,私は呆れた顔を向ける。
学園はとうとう,夏休みに突入していた。
閉鎖してしまった寮に,私達は皆揃って里帰り。
したわけなんだけど。
親バカで寂しがりな母を,ここ迄してくれなくてももいいと見る今。
初日はすき焼き,2日目は高い肉,3日目は寿司と来て。
献血したての血液で乾杯と来ている。
1日どころか数時間もたっていない血液は,本当に高いのに……
と,文句を言えないままため息をついた。
なお,父親は現在飲み会に強制連行されているところなので,不在である。
イケメンなのに少し残念なお父さんは,家族lovesなため,不憫にも最後まで渋っていた。
「携帯,今日も持ち歩いてるの? 前はご飯のとき,ポッケに入れずに部屋に置いてきてたじゃない」