設定に付き合ってくれた血夜くんは,いたずらな顔で最後にそう付け足す。

自然に繋ぎ直されている右腕を,振り払おうとは思わなかった。

利き腕が使えないのは,昔から怖くて苦手だったのに。



「2人の関係は,2人だけのものです」

「……ちょっと」

「そして,朱鳥さんがどんなヴァンパイアかなんてとっくに知ってる僕は,朱鳥さんが今,ちょこっと僕を意識してくれてることも知っています」



一々蒸し返されるのが,すごく嫌なのに。

恥ずかしいばっかりで,言い返す言葉が見つからない。

だって,どれも間違ってなかったから。



「そのまま,朱鳥さんが僕だけ見ててくれたらいいのに。もっと見て,気付いて,いつか好きになってくれたらいいのに」



どうですか? と意味ありげに問われた私は。

つい,迂闊にも頷いてしまいそうだった。