慌てた私の横,血夜くんが横から男の子を拐った。

あちこちキョロキョロと見渡す女性は,真っ青な顔をばっちりと男の子に向けて。

急な高めの抱っこに,軽くはしゃいだ男の子は回収された。



「なに」



じとりと血夜くんを見る。

また胡散臭い顔をしていた。



「僕も悲しくて泣いてたらちゅーしてくれます?」

「しない。私が優しいのは,人間とヴァンパイアの子供だけ……一緒にくらいは,いてあげてもいいけど」

「えー。そんなこと言われたら,嬉しくてもっと泣いちゃいそうです」



変なことばっかり,言わないでよ。



「僕は抱き締めてあげます」

「頼んでないし嬉しくないし私は泣かないの」