亮平に、「両親に紹介したい」と言われた一週間後、全員の予定が合う休日に、陽茉莉は亮平の実家を訪れていた。

亮平の家に入るため水瀬家の敷地内に入ったことはあるが、昼間に見る庭園は夜とはまた違った雰囲気で趣がある。改めて広い敷地に、本当にここは個人宅なのかと疑いたくなる。

レトワールの菓子折りを持って亮平の後に続くと、母屋の前で亮平の両親が待っていた。

スーツを着て難しい顔をした男性とふんわりとしたワンピースをスマートに着こなす女性。上品な雰囲気漂うこの二人が、亮平の両親だ。

「陽茉莉、こちらがうちの両親」

「初めまして。矢田陽茉莉と申します」

丁寧にあいさつをすれば、突然母の瞳がうるうると揺れ大粒の涙がこぼれ落ちる。

「えっ、あのっ……」

先ほどの挨拶が癇に障ったのだろうか、陽茉莉は焦って亮平を見るが、亮平は困ったように笑った。

「母さん、陽茉莉が困ってる」

「だって……ぐすっ……亮平ったら本当に連れてくるんですもの。ぐすっ……こんな可愛いお嬢さんを……ねえ、お父さん」

「まあ、なんだ、入って話そうか」

父もなぜか目頭を押さえながら陽茉莉を家内へ促す。何が何だかわからない陽茉莉は目をぱちくりさせながら亮平の後に続いた。

玄関はとても広く、車椅子の亮平も不自由なく室内用の車椅子に乗り換える。スロープも備えられており、いたるところに車椅子用の工夫が見られた。

亮平は家を追い出されたと言っていたが、玄関だけ見れば決してそんなことはないのだろうと想像する。確かに家全体がバリアフリーになっているわけではないが、少なくとも玄関から居間までは亮平のために設えられたであろう工夫がみられ、陽茉莉はあたたかい気持ちになった。