陽茉莉と亮平はテーブルにコンビニで買ったお弁当を広げる。
特別なものなどなにもない、ありふれたコンビニ弁当なのに、二人で食べるということが幸せでならない。

「亮平さんパスタひとくち食べる? はい、あーん」

陽茉莉はプラスチックフォークでくるくると器用に巻いたパスタを亮平の目の前に差し出す。ほのかに湯気のくゆるパスタはクリームソースが絡んでとても美味しそうだ。

亮平が素直に口を開ければ陽茉莉は嬉しそうにフォークを口に運ぶ。

「美味しいでしょ?」

「うん、美味い」

パスタを咀嚼すると共に陽茉莉のあたたかさを噛みしめる。コンビニ弁当を美味しいと感じながら食べるなんて、久しくなかったことだ。

「陽茉莉と食べると何でも美味しい気がする」

「私も。亮平さんと食べるご飯大好き」

「唐揚げ食べる?」

「いいの? わーい」

弁当ごと差し出そうと思った亮平だったが、目の前の陽茉莉はワクワクと嬉しそうな期待の眼差しだ。

「……もしかして待ってる?」

「待ってる! あーん」

あんぐりと口を開けた陽茉莉はまるで池の鯉のよう。餌付けでもしてる気分になりながら唐揚げを放り込んでやると、もぐもぐと一生懸命に食べながら「美味しい」と満面の笑みになる。

そんな陽茉莉を見て亮平は得も言われぬ満ち足りた気分になった。

どうにも心がくすぐったく落ちつかない。
この家でこんな気持ちになる日がこようとは思ってもみなかったことだ。

「どうしたの、亮平さん?」

「ああ、いや。ちょっと考え事」

「考え事?」

陽茉莉を前にすると隠し事ができない。

というより、陽茉莉は絶対に亮平の話を真剣に聞くし否定しないでいてくれる。それがわかっているからなのか、亮平はどうにも感情のたがが外れやすくなっているのかもしれないと自分でも感じていた。