「…行ってくるね」



車を降りて、その背中へ向かう。


波の音と潮風。


「光っ、」



「…姉ちゃん」



ゆっくり振り返った光。


やっぱりどこか元気がない。



「何してるの!こんなところで!」


「ぼーっとしてたら終電もなくなって、充電も切れてた」


始発始まったら帰ろうと思って、なんて脱力した笑顔を見せる。


…まだ中学生のくせに。


「心配したでしょ!」



「ごめん。」



落ち込んだ様子で俯く光。



「俺、模試の結果全然ダメだった。志望校いけないかも…」



「どうしてそんなに冥王高校に行きたいの?」



光が目指してる学校は進学校で、家からも遠い。


「俺、薬の研究をしたい。お母さんみたいな人たちを減らしたい。だから、薬学部に進学の多い冥王高校へ行きたい。」


真剣に私の目を見てそう言うの。


…私たちのお母さんは治療薬がまだ開発されてない病気になって、亡くなった。