「寒くね?」


6月下旬。昼間は半袖でいけても、夜中はちょっとひんやりしてる。


半袖でいる私を心配してくれるのもいつものこと。



「うん、大丈夫!昼間は暑いよねえ」


シーンとした道路。


いつも彗といるときは他人の目線ばかり気にしてるけど、こんな夜中で誰もいなくて開放的な気分になる。



「あー、私、夜中の道路好きかもっ」



世界に彗と私、2人っきりでいるような気がする。


道路の真ん中に出て、手を広げて夜空を仰ぐ。


「海、危ねぇぞ」


車とか来るかも知れないじゃん、と注意してくる彗


「大丈夫だって」

こんな夜中だもん。


脇道だし、滅多に車なんて通らないよ。

目を閉じてすぅっと息を吸い込んだら、もう夏の夜の匂いがした。



はぁ、気持ちいい。



「海、危ないっ…!」



静けさの中、彗の焦った声が突然聞こえて、


何かと思って目を開ければ、ぐらっと揺れる視界と引き寄せられる感覚。



手を引っ張られて、すっぽりハマったのは彗の逞しい腕の中。



どきっと胸が跳ねる。



「っぶね、」



耳の隣で低くつぶやかれた切羽詰まった声。


その瞬間、目の前をギリギリで通り抜けていく車。