「嶋原、いるー?」

 昼休み、珍しく他のクラスメイトが嶋原君を呼んだかと思えば、来客だと言う。

 お弁当を食べていた嶋原君は、教室の入り口にいる人物を確認すると、立ち上がった。

「毛利」

 名前を呼ぶと、入り口へ足を進める嶋原君。

 何で、知ってる人……? 記憶が残っているの……?

 入り口で嶋原君を呼んだ人は、同じ制服を着た女子生徒。

「……誰なんだろう」

 口にすると、一緒にお昼を取っていた石黒さんと塩見君も、首を傾げる。

「私は知らない。どういう関係だろう」

「てか、記憶のないはずの嶋原が、どうして知ってるわけ?」

 興味を持ったらしい二人は、席を立つと嶋原君を追うように二人に近付いて行く。

 咄嗟に立ち上がってしまった私も、チョコチョコ後を追う。

「なぁ、嶋原、知り合い?」

「あぁ、うん。毛利も雨人なんだ」

 ──この人も、雨人……。