「あぁ、母が亡くなってしまったのがきっかけで、俺の記憶がなくなるって、あれ?」

「そう……だね。ビックリした」

「俺も最初はビックリした」

 嶋原君は落ち着いた表情でこちらを見据え、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「研究所に行くくらい、俺達仲良かったんだね」

「えっ、あっ、それは……違う。たまたま博士と会って、それで……」

「でも、俺にまた声をかけてくれて、ありがとう」

 嬉しいよ、と言う嶋原君に、私は言いようのない気持ちになって、俯く。

「私も……両親がいないの」

 嶋原君にとっては初対面の私だが、秘密を共有するように、ポツリ、ポツリ、話をする。