解散すると、私は早足に学校を出て、歩きながら辺りをキョロキョロする。
嶋原君の家は知らず、彼がどこにいるかなど分からないが、もし会えたら……と思って、ゆっくり帰っていると──
通り過ぎようとした公園のブランコに、紛れもなく嶋原君が座っているではないか。
私服姿の嶋原君は、傘も持っておらず、濡れたまま下を向いている。
トン、トン、ゆっくり近付く私は、嶋原君が濡れぬよう傘を差すと、私の存在に気付いた嶋原君が、じっとこちらを見据えてきた。
「嶋原君」
だが、私の存在はきっともう消去されているのだろう。
嶋原君はポカン、とした表情で、言葉を選んでいる。
「……誰だっけ」
「同じクラスの、恵口」
「俺達、友達だった?」
「……うん」
ゆっくり立ち上がった嶋原君は、傘を出ると、屋根のある休憩スペースへ足を進めた。