「私、嶋原君と同じ学校に通ってるの。一年一組の、毛利ナズナ《もうり なずな》」

 他のクラスになど知り合いはおらず、気にしたことなどなかったが、どうやら同じ高校らしい。

「同じ高校になって、ずっと声かけてみたいと思ってたんだ」

 同じく入院着のような服を着た毛利ナズナは、俺に気さくに笑顔を向ける。

「中々あっちに帰れないね」

「そうだね」

「早く帰れないと、授業にもついていけなくなっちゃうよね。どうにかして、帰れないのかな」

 毛利も早く帰りたいようで、うーん、と考え込む。

 一人で見ても、三人で見ても、暗い空模様は変わらない。

 早く帰りたい。帰りたいのは本心だ。

 だが、帰った所で、今持っている友人との記憶は全て消えると思うと、複雑な気分になった。