「またリセットしても、迷惑じゃなかったら、是非声かけてね」
慣れたことなのだろう、嶋原君は落ち着いており、嫌なドキドキを感じているのは私だけ。
「記憶が消えるって分かってるから、この際聞くけど、恵口はどうしてぎこちないの?」
「ぎこちない……?」
「笑っていても、心から笑っていない感じ」
嶋原君には、見透かされていた?
「いや、別に言わなくてもいいけど、ずっと気になっていたから」
嶋原君の記憶は消えてしまう。
彼は全てを忘れてしまう。
でも、過去を口にしたら、多分泣いてしまって、嶋原君を困らせてしまう。
「……何もないよ」
「ホントに?」
「うん」
「そっか、ならいいんだけどね。書いたら帰ろうか」
相手との距離感って、難しい。
もっと仲良くなれたら……と、思う反面、踏み込んで後で傷付くのが怖い。