──ハッと目を覚ますと、辺りは仄暗く、おでこに手を上げると微かに汗をかいていた。
嫌な夢を見た。思い出したくない、怖い夢を見た……。
私はベットの上に丸くなると、深呼吸をして、一度自分を落ち着かせる。
あれは夢だ、大丈夫。記憶の扉に鍵を閉めるんだ。
何度も自分に言い聞かせ、頬を叩くと、力なく一階に下りる。
「希花ちゃん、おはよう。よく眠れた?」
「あっ、はい。おはようございます」
ふんわり優しく微笑むおばさんに、何とか平常心を保って顔を洗いに行く。
「希花ちゃん、おはよう」
「おじさん、おはようございます」
八月に入り、この家に来てからもうじき一ヶ月が経とうとしている。
根本的な心の傷は癒えないまま、一歩前進はできていないのだが、私はおじさんやおばさんの温かさに包まれている。