「午後からは恵口さんと二人で回りたいなー、なんて」

 館内に内設されたレストランで昼食を取っていると、ふと塩見がチラッと言ってきた。

「そんなにコソコソ言わなくていいよ。塩見は恵口さんがいいんでしょ」

 しかし、石黒から堂々と突っ込まれ、塩見がテヘッと笑った後、俺達は別行動することになった。

 塩見が恵口の腰に手を当て、男らしくリードする様子を、俺はレストランの入り口から見送る。

「さ、私達も行こうか」

 石黒がパンッと手を叩いて、俺よりも先を歩き出し、自分も後を追う。

「塩見ってさ、本当に恵口のこと気になってんの?」

「本人がそう言ってるんだから、そうなんじゃない?」

「ふーん、石黒は塩見のこと、どう思ってる?」

 尋ねると、石黒は友達だよ、と即答。

「いや、恵口より仲良さげ出し、もしかして石黒は塩見のことが好きなんじゃって」

「それないから」

 ハハッと笑う石黒は、どうしたものか、ギュッと俺の手を握ってきたではないか。