「じゃあ、希望はあるんだね」

「俺は、祖父を信じてる。だからそれまで、俺を受け入れてくれる人と一緒に、できるだけ前向きに生きて行けたらと思ってる」

 ──とは言ったものの、偉そうなことを言える立場はなく、苦笑すると、恵口もいつものぎこちない笑顔を見せた。

「嶋原君は凄いね」

「え?」

「私も前向きに生きなきゃな。……嶋原君を見習わないと」

 再び、一緒にスローペースで水槽を見ていく。

 すると、ふとダラン、と伸ばしていた掌が偶然恵口の手の甲に触れ、お互いがバッと逸らす。

「「ごめん」」

 重なった言葉に、思わずぷっと笑うと、恵口も困ったように笑った。

 笑顔の奥に何かが隠されているのは何となく感じ取れたが、今は触れない方が良いのだろう。

 もっと仲良くなったら、恵口は心を開いてくれるのだろうか。

 今度空に晴れ間が見える前に、俺は恵口ともっと仲良くなれるのだろうか。