そうして迎えた放課後、石黒さんや塩見君が部活へ行ってしまった後、私は黒板に貼ってある明日の時間割を書き終え、一人帰ろうとしていた。
すると、下駄箱まで行くと、見知った大きな背中が、傘立てをガサゴソ探していた。
黒いローファーを履くと、その隣に立って、私はライムグリーンの自分の傘を抜き取る。
しかし、隣に立つ嶋原君は、自分の傘が見つからないのか、キョロキョロ探しているではないか。
「傘、見つからないの?」
「うん、ここに入れたはずなんだけど」
「紺色……だったよね?」
「あぁ、うん。知ってたんだ」
転校初日、同じようにオレンジ色の傘をなくしてしまった私に、嶋原君は自分の紺色の傘を貸してくれたから、しっかり覚えていた。
「ない……ね。他のクラスも探してみようか」
「別にいい。濡れて帰っても平気だし」
「でも」
大丈夫と言う嶋原君は、鞄を胸に抱くと、走ってこの場を去ろうとしたのだが──