「石黒さん、事情を教えてほしい……」 

 前の席の石黒さんに言うと、彼女は頷いて私を廊下へと誘導した。

「嶋原は晴れてあっちの世界に行った後、記憶をなくしてこちらの世界に戻ってくるの」

「え……」

「消えるのは友達との記憶だけで、学校生活に支障はきたさないんだけれどね」

 消えた時の授業ノートは私が作っている、と言う石黒さんは状況に慣れているのか、至って落ち着いている。

「それ、本当なの……?」

「私も最初は驚いたけれど、ホントだよ」

 高校に入学して、今回を入れずに今まで二度空が晴れ、嶋原君は二度、記憶をリセットしているらしい。

「私は高校に入学してから嶋原と出会ったんだけれどね、塩見は中学から一緒だった」

「そんなこと……有り得るんだ」

「ここ一ヶ月は雨が降ることなかったから、仲良くなれたかなーって思っていたのに、また最初からやり直し」