「空也、遊びに来たよ」
ボーッとしていると、開けっ放しになっていた扉の奥から現れたのは、同じく雨人の渕上慎吾《ふちがみ しんご》。
慎吾は隣の棟に住んでおり、よく俺を訪ねて来る。
「あー、また戻って来てしまったね。嫌になる」
「ホントだな」
「僕、雨が止む前に船の大きなプラモデルを作っていて、完成間近で良い所だったのに……もーっ」
慎吾は残念そうに溜め息をつくと、コンクリートで作られている椅子に座る。
雨人の住むこちらの世界は、パソコンやテレビはない。
店やアミューズメントパークもなく、俺達は限られたつまらない生活を毎日送るのだ。
「空也は何をしている時に、消失したの?」
「ちょうど球技大会の途中だった。で、消える所を見られてしまった」