またも、うっ……と小さな声を漏らした嶋原君の体が、徐々に透明に透けてゆく。
昔テレビで見た、雨人が消える瞬間の光景と重なる。
思わず手を伸ばしても、肌に触れることはなく、空気をかくだけ。
どうしよう、まさか自分がこのような状況に出くわすなどとは思っておらず、何をしたいいのか分からず、私はただただ名前を呼ぶことしかできない。
嶋原君の後ろに見える窓外の木々が、久々に見る“光”に照らされていた。
「恵口」
最後に嶋原君が私の名前を呼ぶと、彼はふっ──と、音もなく静かに、私の前から忽然と姿を消してしまった。
そして、嶋原君の残骸と言うべきものだろうか、キラキラと虹色の小さな欠片が、どこからともなく降ってくる。
掌の上に乗せてみると、雪のように溶けるそれは、今まで見たことないような煌めきを放っていた。
「……いなくなっちゃった」
何もない空気をかいて、開けっ放しになっていた口を閉じる。
消えた後の虹の欠片はとても綺麗なのに、消える本人はとても苦しそうだった。
嶋原君のあんな姿、見たことない。
何とも言いようのない感情に包まれ、私は暫くその場から動けなかった。