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 ──あの日は、幼稚園の卒園式、久々に天候悪く雨の降る日だった。

 卒園式を終えると、両親に私、三人家族は、思い出の展望台へと車を走らせていた。

 自宅からは遠い、山道をグングン上ってゆく。

 山の頂上にある展望台は、父と母が初めてデートをした所、一年に一度必ず訪れた所、父が母にプロポーズをした所。

 この展望台には思い出が多く、何かの節目に訪れており、今日は卒園の記念にどうしても行きたいと私が言ったため、雨の中向かっていたのだ。

 しかし、頂上に近付くにつれ、更に天候が悪くなって、風がざわざわ木々を不気味に揺らす。

「ねぇ、お母さん、このお人形の腕取れちゃった」

「え? どうしたの、壊れちゃった?」

 最近六歳になって、チャイルドシートを卒業した私は、壊れた人形を片手に前の座席に身を乗り出す。

「ねぇ、お父さんも見て。お母さん直せないみたい」

「ん? どれどれ」

 運転しながら、父は器用に片手で人形を持つと、様子を伺う。