「あ、恵口彼氏いるんだっけ」

「いっ、いるわけないじゃん」

「そっか」

 多少気になっている人がいても、誰かに告白したりなど大胆なことは今までしたことがなく、いつも一歩引いている自分がいる。

 好きな人に好いてもらう、とはどんな感情なのだろう。

「嶋原君は、彼女は」

「いない」

 一見、背も高く顔立ちも良いし、美人で可愛い彼女がいてもおかしくない、と思っていたのに。

「ほら、恵口さんに嶋原、次の試合行くよ」

 呼ばれて顔を上げると、石黒さんが大きな伸びをして先を歩き始める。