~恵口希花~
この金曜日を終えると、高校に入学して丸二週間になる。
「希花ちゃん、学校にはもう慣れた?」
朝、おばさんお手製のマーマレードジャムを塗ったパンを食べていると、もう何度も聞かれたことを、再び尋ねられた。
以前から施設を訪ねていたおばさんは、私の臆病な性格を知っているようで、“転校”という大きな出来事にストレスを感じていないか、心配しているらしい。
「石黒さん……っていう、クラスメイトが、気にかけてくれて」
「あらまぁ、ちゃんと誰かの名前を聞いたのは初めてだわ」
「友達できなかったらできなかったで、仕方がないと思ってたんですけれど、何とか」
「そうなの、良かったわ。安心した」
14日目に着用する制服には、少しだけ慣れて、私は今日も重い鞄を持つと家を後にした。
今日も、雨が降っている。
今日はザーザーと言うよりも、パラパラ。
曇天はいつもよりほんの少し明るくて、私は新しく買ってもらったライムグリーンの傘を差して学校に向かった。