言いながら、恵口はティッシュで鼻を覆ったまま、二人で保健室へ向かうと、室内には保険医の姿がない。

「頭を前方に傾けて、座るといいんだって」

 俺は知っていることを伝えると、恵口を丸椅子に座らせ、新しいティッシュを渡す。

「痛かった?」

「……少しだけ」

「ごめん」

「ううん、平気」

 繊細そうな恵口は隣の席だが、石黒や塩見を通してじゃないと話をしない。

 正直、あまり友達のいなさそうな恵口だが、お世話好きな石黒は恵口を放っておけないらしく、よく声をかけていた。

 そして、塩見は恵口の容姿がタイプのようで、ちょっかいを出している。

「学校、少しは慣れた?」

「あ……うん、まぁ、皆優しいし」